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アイドルビジネスにおいて「一方的な好意」はありえない

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アイドルの熱烈なファンがストーカー化して事件を起こすたびに、アイドル側がファンを非難するときに口にするフレーズがある。「一方的な好意」というフレーズだ。

 

ファンが暴走して犯罪を犯することは当然非難されるべきだと思う。だがそのファンが暴走する背景となったファンのアイドルへの感情をなぜ「一方的な好意」と断ずることができるのだろうか?

 

第三者がそう主張するならまだ筋も通るだろうが、アイドルビジネスの運営側やアイドル本人が「一方的な好意」という言葉をなんの躊躇もなく後ろめたさもなく口にすることが理解できないのだ。

好意を抱かせて売りつけるのがアイドルビジネス

アイドルは擬似的恋愛関係を利用してなりたつ職業だ。全国の童貞・童貞的傾向を持つ非モテの男たちに本来手の届かない「憧れの女の子像」を提示しその女の子が愛嬌よく笑い話しかけ媚びを売る事で、恋愛代替物としての地位を獲得することでアイドルはアイドルとして存在できるのだ。そして以下に恋人のような振る舞い見せつけて恋愛対象としての渇望を沸き立たせられるかでビジネスが成功するかが決まる。

 

そしてその手の届かない恋人=アイドルへの渇望を埋めるためにファンはアイドルグッズを購入するのだ。非モテを魅了することと渇望を利用して売りつけることがセットになってアイドルビジネスは成り立つ。

もし恋愛感情がなければアイドルグッズは誰も買わない

はっきり言ってアイドルはモデルほどスタイルもよくなければ女芸人ほど面白くもない、歌手として勝負できるほどの歌唱力もなければダンサーとして食っていけるほどの踊りもできない。

 

はっきり言ってアイドルは何もかもが中途半端なのだ。「そんなことはない!○○ちゃんの歌も踊りもプロ級だよ!」と言う方もいるかもしれないが、プロ級とは素人の割には上手という程度の意味でしかない。そしてプロの中でも食っていけるのはトッププレイヤーだけである。プロはプロでもバイトしながらたまに頭を下げて出させてもらって数千円程度のおひねりを貰えればラッキー程度のプロと同じくらいのレベルでしかないだろう。

 

もちろん実力的には大したことがなくても稼いでいるプロもいる。武井爽も言っていたが、女子ゴルファーなんかはたいした実力がなくても美人ならミニスカートをはいて媚びを売りながらコーチをすればゴルフでメシを食べる”プロ”としてそこそこの稼ぎを手に入れられるだろう。

 

アイドルのプロ級とはこういう”プロ”としてのプロ級という意味だ。実力がなくてもミニスカートはいてオッサンに媚びを売れば「女の子」の土俵で勝負が出来る。そして恋愛感情を沸き立たせられればられるほど生徒数も仕事も手に入るだろう。世の中にはそういう仕事の仕方があるのだ。一般的に色恋営業と呼ばれるものだ。

 

そしてアイドルは色恋営業を極めた専門家の一つなのだ。

 

色恋にかけられて非モテは踊り一本で食えるほど上手でもなければ歌一本で食えるほど上手でもないアイドルが歌って踊ってるDVDに喜んで金を出す。なぜならDVDの価値は歌でも踊りでもない、歌って踊ってるのがアイドルだという点にあるからだ。

 

ファンさえ獲得できれば本物ある必要はない、本物でなくともファンから見ればアイドルの顔が書かれた紙は福沢諭吉の顔と同じ価値を持つからだ。

アイドルとはプロのオタサーの姫である

スタイルも顔も特別よい必要はないし歌や踊りの実力も特に必要はない。だが”かわいくて”、”頑張ってて”、”純粋な性格”である姿だけはアピールしなければならない。色恋営業に全てがかかっている以上、ここだけは譲れない。

 

そのためによく用いられる方法が舞台裏を見せる手法だ。本来表に出ないはずの舞台裏で汗を流し泣き笑い、時たま垣間挿入される”普通な女の子の表情”に非モテのドルオタたちは胸を突き動かされるのである。

 

もちろんこの舞台裏手法は手法であり計算されたものだ。その証拠に喧嘩のシーンも仲間割れのシーンもオタクが何色を示しつつも受け入れられる程度(リアリティーを出すため)の物に制限されているし、そもそもほんとにえげつないことはカメラのいないところで行われている。

 

目的はアイドルの見せたい面やアピールしたい面を「舞台裏で見せる本当の顔」として見せることが目的なのでアイドルがタバコを吸いながら彼氏とオタクの悪口を言いながらいちゃついてるようなシーンは絶対に流れない。

 

アピールするのはとにかくカワイイ女の子である点だ。リーダー的表情も性格の悪い表情も全て女の子の種類・属性としての役割しかない。

 

本当はたいした努力をしていなくても汗するシーンを写せばオタクが「頑張ってて偉い!」と褒めちぎり、泣いていれば「辛くてもめげない○○ちゃんすごい!」と褒めちぎる。そしてクソつまらない微妙な腰振りダンスをみて「練習の成果だ!立派だ!上手!」と蛍光棒を振り回しながら汗を飛び散らせるのである。

 

まさに元男子校に数人だけいるブサイクな女子生徒のようだ。踊りも歌も下手でいい、頑張ってる姿さえ見せればいい、そうすればみんなが下手でもかばってくれるし応援(購入)してくれる。

 

とにかく媚びを売ってパンを買ってこい飲み物を買ってこいと取り巻きにパシらせるオタサーの姫、これを大人たちが姫側も取り巻き側も本気でやっているのがアイドルビジネスなのだ。

 

アイドルは好意を抱かせることが一番の仕事

歌も踊りも大切ではない、でも頑張っている姿だけみせればいい。顔もスタイルもよくなくていい、最低限のレベルでさえあればいい。なぜならファンは気にせずにお金を出してくれるから。

 

そしてお金を喜んで出すのは結局アイドルがオタクたちに恋愛的渇望を抱かせる事に成功しているからである。アイドルは好意を抱かせる事こそメシの種なのだ。

 

仮にアイドル自身に実は歌手として一本でやっていける才能があるとしよう、たとえそうだとしても結局媚びを売って下手な歌を量産しながら握手しまくったほうが儲かる。歌を上手になる努力は非効率だし媚びを売って握手しながら「来てくれてありがとう」と目を見ながら微笑んだ方がファンとのつながりを強固なものに出来るのだ。

 

中には本当は歌手や女優にあこがれていてオタクは踏み台、アイドルは名を売るための手段程度にしか考えていない者もいる。本当に実力があればそっち一本で頑張れよと言いたくなるところだが、実力の世界で勝負するよりオタクに媚びを売って知名度を売るほうが戦略的には正しい面もある。アイドルが数週間稽古してドラマに出るなんて昔から珍しくもない話だ。

 

結局アイドルは恋愛感情を抱かせて搾取する色恋営業の世界の住人でしかないのだ。主なファン層である童貞オタクの精神的貧困を利用して知名度や金を搾取する、性的弱者を利用した貧困ビジネスの一種と思ってもらっていい。

 

だがファンは危機に直面する。嘘が嘘とわかった時だ。全ては名を売るため、金を稼ぐために利用されただけだったのだと気づいたとき、ファンは絶望する。

 

なぜ絶望するのか?

 

手元にあるのが下手な歌と下手な踊りを写しただけの価値のない映像の映ったDVDでしかないことに気づくからだ。ゴミをただ価値があるものと思い込まされて売りつけられただけだという事実に気付かされるからだ。

 

アイドルは色恋営業と言ったが、まさに恋愛詐欺に会った時のような強い精神的動揺に襲われるのだ。「時のような」と言っているのは単に今の所立件されたケースがないからだ。だが現実にアイドルグッズも高いものは新興宗教が売りつける高いツボのようなものだし、握手券付CDは布教活動のためのノルマとして押し付けられる教本のようなものだ。

 

宗教との違いは単におっさんか女の子か?許しや幸せを得ようとする感情かカワイイ女の子のを得たいと思う感情か?に過ぎない。

 

宗教で騙された人間は何年もの時間と決して少なくはないお金を無駄にする。被害者は「決して許せない」「振り回された時間とお金を返してくれ」と訴える。中には本気で殺意を抱くものもいる。

 

宗教側は「一方的で勝手な言い分」「全て本人の自由意志で行われた」などと主張することに決まっている。

 

アイドルの事件が起きるたびに運営側や同じく人気商売であるテレビタレント達が「許せない」と憤りの表情を見せるたびに思うのだが、その「許せない」はどういう意味の「許せない」なのだろうか?

 

一方的に搾取していいはずの対象から予想外のしっぺ返しを食らう可能性に気付かされ、苛立ちを抱えつつ一方的な被害者の側面をクローズアップして正当性を主張するための「許せない」なのではないだろうか?

 

アイドルが好意を抱かせて獲得したファンにグッズなどを売りつけて利益を得る商売である以上、好意は自然発生したものではない。「一方的な好意」はアイドル側が誘導し創りだした意図的なものだ。

 

このアイドルの言う「一方的な好意」が文字通り、搾取するための「一方的に好意を抱くように」作り出された感情であればそれはなんと哀しいことだろう。ファンはただ「一方的に好意を抱き」、「一方的に」金を貢いでさえくれればいい存在だとみなしている事にほかならないではないか。

 

ファンから見ればある意味究極の裏切りである。あんなに笑顔を振りまき励ましてくれたから応援したのに「一方的な好意」なのか?と。ではあの笑顔はなんだったのか?ただ単に金をむしりとり名を売るために利用したのか?と。

 

熱狂的なファンほどアイドルは好意を向けてくれていると感じているし、アイドルサイドもそう感じるように計算しているはずだ。ファンは好意を向けてもらえていると考えているからこそ下手くそなCDやDVDを買って好意を表現するのだ。

 

一方的の意味が「一方通行」という意味なのか、それとも「一方が勝手に抱いた感情」という意味なのかはわからない。だが少なくとも後者の「一方が勝手に抱いた感情」という意味の好意はアイドルビジネスにおいてはありえないことだ。

 

だとすれば一方的な好意の意味は文字通りの一方通行という意味で、「ファンは好きかもしれないけど私達は金づるとしか見ていないわ」という意味なのだとすればそれはまさに恋愛詐欺である。何らかの報復を受けても致し方ない所業ではないだろうか?

 

※書き終えて今気づいたことがある。後者の「一方が勝手に抱いた感情」という意味はありえないと思っていたが、もしかするとこのパターンすらありえるのかもしれない。アイドルがどういう仕組みで回っているのかもわからずに無意識に、息をするかのように相手の好意を利用して搾取してきたタイプのサイコパス的傾向の人間が。万引きを悪いと知らずに行なってきて、初めて注意されて「そんなつもりじゃなかったんだけど!?」と逆切れするタイプの人間がいるかもしれない。

 

宗教と同じでアイドルを直接的に取り締まる法律はない。たとえ教祖が刺されても被害者は一方的に加害者として断罪される。恋愛感情を利用して搾取するというグレーな業態である以上、なんらか規制が必要なのではないだろうか?